ここ数年で「副業解禁」という言葉を耳にする機会がぐっと増えました。コロナ禍をきっかけに働き方が見直され、リモートワークの浸透とともに「一つの会社だけに縛られない働き方」への関心が高まったのは、記憶に新しいところです。

そんななかでも、いまだに「うちは副業禁止だから」と口にする人がいます。実際に就業規則にそう書いてある会社も少なくありません。でも、ここでふと疑問が浮かびます。

本当に、副業は禁止されているのでしょうか?

今日はその実態について、法律の視点や企業側の本音、そして私たち働く側のリアルな意識を交えながら、じっくり考えてみたいと思います。

就業規則の「副業禁止」はどこまで効力がある?

まず最初に確認しておきたいのは、企業が定める就業規則は、たしかに社員にとっては基本的なルールブックだということ。とはいえ、そこに書かれていることすべてが法律と同じような絶対的な効力を持っているわけではありません。

実は、日本の法律(労働基準法や憲法など)では、労働者が勤務時間外に何をして過ごすかは基本的に自由とされています。つまり、「副業をしてはいけない」と会社が一方的に縛ることには、法的な限界があるということです。

憲法第22条では「職業選択の自由」が保障されています。これは副業の自由にもつながるものです。

もちろん、「会社の信用を傷つけるような行為」や「本業に支障をきたすような副業」は制限の対象になります。たとえば、同業他社で働くことや、睡眠時間が確保できずに勤務に支障が出るようなケースですね。

でも、そうでない場合――たとえば週末にハンドメイド作品をフリマアプリで売るとか、夜にちょっとしたライティングの仕事を受けるといった活動は、実質的に問題視されにくいのが現状です。

会社が「副業禁止」と言いたがる本当の理由

企業が副業を「禁止」または「原則禁止」としている背景には、いくつかの事情があります。

  • 情報漏洩のリスク(とくに競合他社との関係)
  • 本業への集中力低下への懸念
  • 過重労働による健康管理の難しさ
  • 労災の判断が複雑になる可能性

たしかに企業としては、社員の副業によって本業にマイナスの影響が出るリスクを避けたい、というのは理解できます。ただし、この「リスク管理」を名目に、包括的に「副業禁止」としてしまっているケースも多く見られます。

それに加え、「副業が浸透することで転職や退職のハードルが下がるのでは」と恐れている企業もあるようです。副業によって個人のキャリアや収入の選択肢が広がれば、会社に依存しすぎない働き方が可能になりますから。

でも、それは見方を変えれば「社員の自主性や多様な働き方を尊重するチャンス」でもあるはずです。

実際、こっそり副業している人は少なくない

ここまで読んで、「でも、うちの会社は就業規則で禁止されてるし……」と思った方もいるかもしれません。でも、実際には副業禁止の会社に勤めながら、副業をしている人は珍しくないのが実情です。

クラウドソーシングやスキルシェアのサービス、あるいはYouTubeやインスタグラムなど、個人が発信力を持てる時代になった今、「副業」と呼ばれる活動のハードルはかなり下がっています。

特に、会社に申告しなくてもできるような小規模な副業や、収益がまだ発生していない準備段階の活動などは、「趣味の延長」として見過ごされるケースもあります。

参考:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」

ただし、会社に黙って副業をしていた結果、トラブルになることもゼロではありません。住民税から収入がバレたり、顧客とのトラブルが会社に波及したり……。

ですので、もし本格的に副業に取り組むなら、「どうすれば問題なく両立できるか?」を事前に考えることがとても大切です。

「副業OK」の会社=なんでも自由、ではない

一方で、最近では「副業解禁」を打ち出している企業も増えています。特にベンチャー企業やIT業界では、スキルシェアを前提としたフラットな文化の中で、副業がごく自然なものとして受け入れられています。

ただし、「副業OK」と言われても、すべてが自由というわけではありません。

企業によっては、以下のような制限を設けていることがあります:

  • 事前に申請が必要
  • 本業との関連性によってはNG
  • 報酬額に制限がある

「副業OK」というスタンスがあっても、企業のスタンスや文化によって実際の運用はさまざま。たとえ許可されていても、社内での空気感や理解度が低い場合、「やりづらい」と感じてしまう人もいるのが現実です。

これからの時代、自分の「働き方リテラシー」が試される

副業が当たり前になりつつある今、求められているのは、「やるかやらないか」よりも“どう付き合うか”という視点なのかもしれません。

企業の制度や規則に振り回されすぎず、自分自身の働き方やキャリアにとって何が必要なのかを見極めていく。そのためには、就業規則を一読すること、労働法の基本を知っておくこと、税金の仕組みを把握すること――小さなことかもしれませんが、確かな一歩です。

副業がもたらすのは、単なる「収入の補填」ではなく、「自分のスキルや可能性を試せる場」でもあります。本業とは別の視点を持つことで、仕事に対する視野が広がるという効果もあります。

グレーを自分で判断できる人になる

副業に関する話題は、白か黒かでは語りきれないグレーな部分が多いです。だからこそ大切なのは、自分自身がそのグレーの中でどう動くか、どう選ぶか、という視点。

制度が整っていないからと言って何もしないのではなく、「どうすればリスクを抑えて、自分の未来を広げられるか」を考える力が、これからの私たちには必要なのだと思います。

副業禁止の会社が「本当に禁止なのか?」という問いは、突き詰めていくと「私はこれから、どんな働き方をしたいのか?」という問いにもつながっていくように感じます。

柔軟に、でも芯のある選択を。そんなふうに自分の働き方をデザインしていけたら、もっと自由で、もっと心地よい未来が待っているかもしれません。

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